New moon Cafe Merta Sari 3月の新月 [ものがたり] 第10話 その1

New moon Cafe Merta Sari 3月の新月 [ものがたり] 第10話 その1

身体が重かった。

 

いや、それ以上に心の方が重たかった。

 

 

 

 

せっかく3月になり、少しずつ春の兆しも感じられたというのに、

どうにも調子が出ない日々が続いていた。

飛ぶように過ぎた2月を終え、

冷たい雨の中迎えた桃の節句。

寒さの中でも一雨ごとに地面が緩み、

 

雨と雨の合間に迎える晴れの日の太陽の日差しの眩しさに、

春が確実に近づいているのを感じる。

本来だったら、重く長かった冬の終わりを感じ

心が浮き足立つはずなのに、

どうしてだろう。

心が軽くなるどころか

毎日どんどんわけもなく落ち込み、

3月に入ってからは、外に出て人に会うのも億劫だった。

せっかくのお休みだった今日。

 

New Moon Caféに出会ってからはいつも新月の日は休みを取ることにしているのだけれど、

 

今日はどうしても、行けそうになかった。

 

いや、行きたいのだけれど、どうしても身体が動きそうになかった。

ちょっと2月に頑張りすぎてしまったのかな?

私もしかして、うつっぽいのかな、、、。

 

 

いつもだったら朝起きて、窓を開けて新鮮な空気を入れてから

ヨーガをして、お白湯を沸かして飲んで、

 

身体を整えてから気持ちよく仕事に行っているのに

最近はそれすらも億劫で、いつの間にかやらなくなっていた。

 

 

今日は朝からパジャマのままで

 

布団の中で目を閉じている。

 

最近、仕事でしてしまった失敗をきっかけに、自分の欠点を反省していたら、自分のできないところばかりを思い出し、だんだんと自信を失ってきてしまっていた。

 

結局私って、何もできないんだなあ、、、。

みんな昇進したり、結婚したり、子どもが生まれたりして、それぞれの居場所で輝いているように見える。 それなのに私はといえば、大きなモチベーションもないままにずっと仕事をしていて、そしてそこでうまくやれているわけでもなくて、、、この間みたいに大きなミスをしてみんなに迷惑をかけている、、、。

 

そんな自分のことを改めて考えていると、本当に自分なんて価値のない人間のように思えてきてしまうのだった。

布団の中でもう一度寝返りを打つ。

 

時計の針はもう昼すぎを指していた。

今日は雨で、朝からずっと薄暗いので

なんとなく昼を過ぎても気持ちも晴れない。

起きなくては、と思いながらこのまま今日はズルズルと夜まで

こうしてしまうのかもしれない。

 

「今日ぐらい、のんびりしてもいいや!」

 

と思えたらいいのだけれど、

今の自分をそんな風に肯定的に捉えることも到底できず、

 

またそんな自分に嫌気がさしながら、重たい気持ちで布団の縁を眺める。

 

今頃、New Moon Caféは賑わっているんだろうか。

エミさんの華やかでパッとその場が明るくなる、あの優しいひまわりのような笑顔を思い出しながら、今日の自分はどうしてもその場に相応しくないような気がしてきて、またぎゅっと目を閉じる。

 

自分はこんなにも弱い人間だったのだろうか。

突然やってきたこの落ち込みに、自分自身でも対応しきれず

 

どうしていいのか困惑もしていた。

 

 

***

そんな時、突然携帯電話の呼び出し音がなった。

 

 

Written by Saki Ikeda

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New!月の新月

 

◯Story-ものがたり

《ものがたり》第10話 3月の新月 その1

《ものがたり》第10話 3月の新月 その2

《ものがたり》第10話 3月の新月 その3

《ものがたり》第10話 3月の新月 その4(最終話)

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