New moon Cafe Merta Sari 2月の新月 [ものがたり] 第9話 その1

手袋を外し、かじかんだ手で扉を開けると
暖かい空気が中からふわっと流れ出し、身体を包んだ。
途端に、ホッと肩の力が抜けた。

 

「いらっしゃいませ」

テーブルを拭いていたエミさんが手を止め、
顔を上げてにっこりと微笑んだ。

ドアを閉め、巻いていたマフラーを外し
ホッと一息つく。


手で触れると、風にさらされた頰はひんやりと冷たい。

新月の日だけにオープンするここ、New Moon Café

一度しかないチャンスを、毎月心待ちにしているけれど
今月は本当に来ようかどうしようかと、直前まで気持ちが定まらなかった。

 

ここのところの寒さは冷え性の私にとってはとても辛く、年が明けてからは、仕事以外での外出をほぼ控えてしまうくらいに、外に出るのが億劫だった。

 

ここ最近の休日は細々とした事を片付けながら、暖かい家の中でゆっくりとすることが常となっていたので、こうやってわざわざ用事を作って外出するのには「えいやっ」と力が要った。

だけれど寒い中、マフラーに顔を埋めて駅から歩き、この場所にたどり着いて、エミさんの「いらっしゃいませ」を聞くと、

 

いつもと変わらない平和な光景が私を待っていて、ああ、頑張ってここに来て本当によかったなあと思うのだった。

 

コートを脱ぎ腕に抱え、いつもの窓側の席ではない、奥のソファの席に腰をおろす。窓からの冷気から少しでも離れるためだ。

 

パチパチと炎が見える小さなストーブが部屋の真ん中に置いてあり、しばしその炎を見つめていると、

外の冷たい世界が徐々に遠く感じられた。つま先や指先がじんわりと温かくなってゆく。

 

冬は辛いけれど、こういった感覚を感じると幸せだなあと思う。

「寒い中よくおいでくださいました。風邪も流行っていますが、お元気でしたか?」

 

コトリとお白湯のグラスを置いて、エミさんが私に尋ねた。

「ありがとうございます。おかげさまで風邪は引かずに元気にやっています。でも寒さのせいで、なんだか毎日気持ちも塞いでしまっていて、、、。」

 

私は早速お白湯のグラスに手を伸ばし、両手でグラスを包み込むように持ちながら、そう答えた。

 

エミさんは

 

「ああ、うんうん。そうですよね。わかります。冬も後半になってくると、随分とKapha(カファ)も蓄積していますものね。」

 

と言って、うなづきながらメニューを広げた。

 

「暦の上では春とはいえ、体が開いて冷たく重たいKapha(カファ)が溶け出して行くのは、もう少し先ですものね。

 

本日はKapha(カファ)ドーシャの蓄積ですっかり重たくなっている、そんな今月の身体や心に効くメニューにしてありますので、ぴったりですね。。」

 

わあ!私の不調に、ランチを処方してもらったみたいだわ!と私は驚きながら、エミさんの開いてくださったメニューを覗き込んだ。

そして今学んでいるアーユルヴェーダの知識をフル回転で思い出してみた。

 

ええっと、、、Kapha(カファ)というのは水のドーシャで、「重性」「冷性」「粘着性」「停滞性」という性質があったから、Kapha(カファ)に効くということは、その反対の性質を持ったものを取り入れるんだっけ。

それから6味のうち、味は「苦味」「渋み」「辛味」、がKapha(カファ)にを減らしてくれるんだった、、、かな。

まだ頼りない記憶を手繰り寄せながら、本当に今じぶんが感じている不調はKapha(カファ)の性質そのものなのだなあ!と改めてびっくりした。

「重性」からくる身体や気持ちの重たさ。(そういえば体重もしっかりこの冬で増えている、、、。)

「冷性」は明らかに身体の冷え。特に最近では手先足先ではなく自分のお腹やお尻もいつも冷たい。もしかしたら、何をするにも頑張れない、心が熱くなるということが滅多になくなったのもこの冷性と関係しているのかもしれない。。

 

「粘着性」は最近家の中でじっとしていて誰とも会わないせいか、やたらと昔のことを思い出して反芻していたり、過去にあった一つのことばかりを考えていたりする。それから、朝起きた時に口の中が甘くネバネバするような感じがするのもKapha(カファ)と関係していると確かアーユルヴェーダの先生が言っていた。

 

そして「停滞性」はまさに今の私そのものだ。思考も停滞しているし、家にいる割には特に何をしているわけでもない。そして何より体重が増えたのは体の代謝が落ちて、巡りが停滞しているからに違いないのだ。いつもソックスのゴムの跡がなかなか消えない足を見て、随分とむくんでいるのだなあとショックを受ける。

でもどうしたらいいというのだろう。

気持ちも重たく、いろいろなことが億劫になっている今は、本当に何かをするということがとてつもなくしんどい。

 

もしかしたらちょっと鬱っぽいのかな、、と考えながらも食べることだけは止まらず、ついお菓子や甘いものをたくさん食べている自分に気づいてまた自己嫌悪になるのだった。

***

そんな最近の日々を思い出しながら、メニューを一つひとつ上から順にゆっくりと読んでゆく。

 

Written by Saki Ikeda

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◯Recipe-レシピ coming soon!

<2月のnew moon旬のお魚ランチ>

 

 

 

 

 

 

<2月のnew moonプレート>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Coming soon! 2/14 11:00up

  • 春菊のクリーム白和え

 

 

 

 

 

 

 

<2月のごはん>

 

 

 

 

 

 

 

<2月のスープ>

 

 

 

 

 

 

 

<2月のパン>

●ミニトースト

2月のNew moonワイン>

Gotsa Mtsvaneゴッツァ ムツヴァネ(オレンジ/辛口)

<2月のnew moon ハーブティー>

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