
— 整える旅の途中で、ひとつ先へ進んだ日のこと
今日、プライベートレッスンを受けてくださって、もう4〜5年になる方から、こんなお話がありました。
「こんなにできると思っていなかった」
その言葉を聞いたとき
私はとても心をぎゅっと掴まれました。
できないと思っていた自分を超えた瞬間。
やったことがない世界って、
“できる自分”が描きづらいものですよね。
多くの不安は、ただ知らないことから生まれるとか。
今日は、その方が一歩先へ進んだお話です。
彼女が久しぶりにサロンへ来てくださったのは、
出産後、腰痛に悩まされていた子育ての真っ只中でした。
最初はマッサージで「とにかく休む」こと。
少しでも腰が楽になる時間を持つことが目的だったと思います。
何度か通ううちに、
「このままじゃだめかも」と感じて、
プライベートレッスンにも挑戦してみることに。
でも最初は、
「体のここを感じてみてください」とお伝えしても、
「それがわからないんですよね〜」と笑っていらっしゃいました。
おうちでできるワークもなかなかできず、
子育ての合間に“自分のための時間”を取るのは本当に大変だったと思います。
「私、意志が弱いのかな…」
「やっぱり、私には無理かも」
そんなふうに感じていた時期もあったと、後に話してくださいました。
それでも、月に1回だけはサロンに来る。
やさしい動きでも体は楽になるし、
レッスン後のマッサージがとにかく幸せだったそうです。
そんなふうに続けていくうちに、少しずつ腰痛も楽になり、
ワークショップにも参加されて、
「もっと自分の体のことを知りたい」と気持ちが動いていきました。
呼吸、セルフマッサージ、ゆるめ方、鍛え方。
どれも、“誰かにやってもらうもの”ではなく、
“自分の感覚でできること”になっていった。
気がつけば、体を動かすことが楽しい。
毎日が、なんだか軽い。
気持ちも、前より元気で心地いい。
そして、今日のひとこと。
「こんなにできると思ってなかったです」
私たちは、なぜときどき、
やりたいことや、なりたい自分を信じられなくなるんでしょうか。
「これまでもできなかった」
「忙しいし無理かも」
「私にはきっとできない」
そう思ってしまうのは、脳の働きによるものなのだそうです。
脳は「安全志向」の臓器。
危険や変化を避けるために、
予測と制御を担当している部分があります。
脳の中心にある、小さなアーモンドのような扁桃体は、
恐怖や不安の記憶を司り、
「またああなるかも」と、否定的な予測を再生します。
反対に、おでこの裏あたりにある前頭前野は、
予測や判断、意思決定を担う場所。
扁桃体で感じた「怖いかも…」という感覚に対して、
「それ、本当に危ないのかな?」と立ち止まって考えることもできます。
けれど近年、私たちの脳は、過剰な情報やストレスで
疲労しきっていて——
判断を誤ったり、「できないかも」が勝ってしまうこともある。
私たちと同じように、
脳も“楽な方”“知っている方”を選びたがる。
つまり、現状維持が心地よいんです。
だから、
「やればできる」と頭で分かっていても、
“変化”に向かうのは難しいもの。
でも。
体を動かして、少しずつ“できる”ことが増えていくと、
「あれ、これもできる」
「なんか、体が軽い」
「毎日が、少しだけ楽だな」
——そんなふうに、思考の外側から“嬉しいサプライズ”が起こることがあるんです。
古い思考やクセを飛び越えて、
身体感覚が「新しい可能性」を知らせてくれる。
こどもの頃に、みんなが当たり前に持っていた、
自由な体の感覚。
それを取り戻したとき、
「ああ、わたしはここにいた。」
そんな感じがします。
体は、
私たちがまだ気づいていない、
たくさんの“のびしろ”を持っていることを教えてくれます。
私たちは自分で思っているより
可能性があるようです。
むふふ。
Emi