「ええーーーーー!」
と声には出さないものの、心の中で叫び
そしてがっくりと膝から力が抜けて行くのを感じた。
私ったらなんてことだろう。
毎月あんなに楽しみにしていたのに、
師走に入ってから気忙しく、何かと過密なスケジュールでバタバタしていたからか、新月の日をすっかり勘違いしていたのだった。
そんな自分にショックを受けながら、仕方なく今来たばかりの道をとぼとぼと引き返すことにした。
***
昨日OPENしていたであろうNew Moon Café。
昨日はどんなランチメニューだったんだろう。
そしてどんなお客様が集っていたのだろう。
エミさんはいつもの通りのあの笑顔でお店を朗らかに、温かく照らしていたのだろう、と思うと
その空間に自分が居ることができなかったことが少し悲しくて、涙が出そうになった。
再び駅までの道のりを歩きながら、
今日のお昼は何を食べようかな、、、と
ぼんやりと考えた。
身体も心もエミさんのご飯のモードだったので
今から他のお店に入る気にもならなかった。
***
お腹がぐうと鳴ってもとぼとぼと歩みを進めていたら
急に「ご自由にどうぞ」と書かれた札と、山盛りの真っ赤なりんごが目に飛び込んできた。
見上げると、そこには大きなりんごの木があった。
まだまだ枝には実がなっていて、それ以上の数のりんごがカゴにどっさりと盛られていた。
日本の八百屋さんやスーパーではめったに見ない、小ぶりのりんごだった。
イギリスに行った時に、確かこのようなりんごを植えている家が山ほどあって、そしてこの小さいりんごは酸っぱいし美味しくないからCooking Appleなのよ、と教えてもらった記憶がある。
そのままだと食べられないから、お菓子やお料理に使うのよ、と。
もしかしたら、このりんごもそうなのかな?
と一軒家に植えられているその木を見上げながら、思う。
確かにどんなにお料理をしても1家族では到底食べきれないくらいの量のりんごが採れそうだった。
もしそうだったら、このりんごをいただいて今日は焼きりんごを作ってみようかな。
想像しただけで、シナモンの香りがふっと鼻をくすぐった感じがした。
オーブンから出したての、アツアツのりんごの甘い香り。
バターとお砂糖はどうしようかな、、。
頭の中で材料を考える。
***
実は今、少しずつアーユルヴェーダを学び始めている。
体質に合わせた食事のことや、オイルマッサージのこと。そして季節のエネルギー。
アーユルヴェーダはお砂糖自体はNGではないけれど、確か冬の時期に甘い物や乳製品、消化に重いものを食べすぎると、春に花粉症になると言っていた気がする。
毎年12月には、クリスマスや忘年会、パーディーも多いのでケーキやスイーツをいつもよりもたくさん楽しむのが習慣になっていて、そして春先に身体が重くて自己嫌悪になるのも習慣だった。
そして花粉症にもいつの頃からか、毎年の習慣のように春には悩まされるようになっていた。
年々花粉症の人も増えるし、そんなものかと思って気にしていなかったけれど
冬の甘いものと春の花粉症が繋がっているならば、
少し今年は調整してみようかな、とアーユルヴェーダを学びながらそう思ったのだった。
***
焼きりんごを作りたい。だけれど定番のお砂糖とバターについてはどうしようか。
そんなことを考えながら、りんごを2個カバンに入れ
ありがとうございます、と心の中でお礼を言って、その家を後にした。
Written by Saki Ikeda
New moon Cafe Merta Sari もくじ
12月の新月
◯Story-ものがたり
New!《ものがたり》第7話 11月の新月 その4 (最終話)
◯Recipe-レシピとオススメ
New!
<12月のnew moon+1デリ>
[Recipe] 小松菜と芽ひじきとレンコンのホットビーンズサラダ
coming soon!
<12月のnew moon+1旬のお魚>
ブリのスパイシームニエル
<12月のスープ>
大根ポタージュ
<12月のパン>
365日のラシドネ