「そうなんです。アヌパマ先生(5〜6月 春のアーユルヴェーダビューティ講座)
という女性のドクターの元でアーユルヴェーダのことを学び始めたんです。」
それを聞いて、エミさんの顔がパッとまた一段明るくなった。
「そうなんですね!インドの先生から、いいですね!本場の先生から教わるアーユルヴェーダは、面白いでしょう?」
と嬉しそうに尋ねてくれた。
「はい。理論を学ぶと、徐々にこのカフェでなぜこれを出しているのか、とか、季節ごとになんでこのお料理を食べると体調が良くなるのか、とかがわかってくるのがすごく面白いです。そして、必ず身体も反応してくれることも。」
と私が答えると、エミさんはニコニコしながらウンウンと頷く。
「そう、そうなんですよね!アーユルヴェーダの理論はすごくわかりやすくて、そして食べ物はすぐに体も心も反応してくれるところが面白いですよね。」
大好きなエミさんとアーユルヴェーダの話をすることができて、私はなんだかとっても嬉しかった。
周りの人に、「最近アーユルヴェーダを学び始めたんだ」というと、大概「マッサージを習い始めたの?!」と言わることが多かった。オイルを使ったトリートメント=アーユルヴェーダというイメージが一般的には強いのだな、とその都度驚いたけれど、アーユルヴェーダは実際このような食の理論も豊富にある医学なのだった。
New Moon Caféで食べ物からアーユルヴェーダを知った私にとって、本物のアーユルヴェーダの知識に色々な角度から体系的に触れることはとても面白かった。
「そう、なので種明かしをすると、今月のNew Moon CaféのメニューはKapha(カファ)を増やす“甘味”を極力減らし、“苦味”“渋味”辛味“をたくさん取れるようになっています。
主食もこの時期は、お米だとKapha(カファ)を増やし重たくなりすぎるので、大麦(おおむぎ)です。リゾットなので量は多く感じるかもしれませんが、実際に使う穀物はほんの少量なので消化にも軽いんですよ。
そして、小麦からできているパンも、体を冷やして重たくしてしまうので、なるべく軽く、乾いた性質のものをこの時期は選んでいます。先月のライ麦のナッキレイパなんかもそうですね。
逆に夏場は積極的に”甘味”を摂ることで身体のバランスが整うので、美味しいお米のご飯や美味しい小麦のパンのメニューは夏に入れていますよ。」
そうエミさんが言う。
私もウンウンと頷きながら、夏のNew Moon Caféのクレソンご飯やクラムライス、ターメリックのいかめしなどを思い出していた。
夏場に炭水化物からしっかりと甘味をとると、体も自然と楽になり、過剰にアイスクリームや冷たい飲み物などを欲さなくなっていった。
今回は、今の私—2月の冷え切って重たくなった私—は炭水化物の甘味や、消化に重たい脂ののったお魚は身体が欲していないな、と感じたので、お野菜だけをいただいて身体の過剰になったKapha(カファ)を整えて帰ろうかな、と思ったのだった。
ううん、私が思った、というよりも、身体がそう求めていた、といった方が正しいかもしれなかった。
アーユルヴェーダを学び始めてからの、面白いことのもう一つは、
身体の声が少しずつ聞けるようになったことだ。
「いただきます」
と言って手を合わせてから、まだ温かいスープに口をつける。
小松菜特有の、バターのような優しい香りと、程よい苦味が合わさって
なんとも言えない美味しさだった。身体が喜んでいる、ってこう言うことだ!
と思った。
ゆっくりと、噛み締めながら菜の花やふきのとうなどの早春の恵みをいただく。
菜の花の上に散らしているフェヌグリークは独特の苦味で、ポリポリと美味しかった。フェヌグリークも確かKapha(カファ)を減らすスパイスだったな、、、とアヌパマ先生から習ったことを思い出す。
スパイスの効能も知ると、アーユルヴェーダはまさに「薬膳」だった。
そこに更に、エミさんのお料理は一口食べると身体中に駆け巡るようなエネルギーがあって、このエネルギーをいただいて元気になっているんだな!ということを毎回実感するのだった。
アーユルヴェーダ的に言うと“オージャス”がたっぷり、なんだろうな。
といつも感心する。
こういったオージャスのようなエネルギーが自分の中に少なくなっていたからか、無気力になったり、判断ができなくなったりして、ついつい甘い物ばかりをだらだら食べてしまったり、身体に良くはないとわかっていても出来合いのおかずやお菓子ばかりを食べてしまっていた。
ここ最近の、満たされない思いと自分の食事の乱れ方を思い出して
ああ、こう言うエネルギーを本当は欲していたのだな、、
と思った。
自分でこんなお料理が作れたらどんなにいいだろう。
大好きなNew Moon Caféのご飯、このエネルギーの秘密が知りたくて
私はアーユルヴェーダに興味を持ったのかもしれなかった。
見えないけれど、確実に、自分の中心になっているもの。
それは、空間や環境、その人の纏う雰囲気や、放つ言葉を通しても感じることができて、そして食べ物を通すと一番ダイレクトに体内に取り込める気がする。
***
ランチをいただきながら、身体が温かく、そして軽くなってゆくのを感じた。
そして最後にブルーな気分をなくしてくれるハーブティーをオーダーして、ゆっくりといただいた。
量は少なくても、心も身体もしっかりと満たされていた。
食べ物は本当に不思議だ、と思う。
どれだけたくさん食べても満たされないことがあるかと思えば、
ほんの少量でも心も身体も満足して幸せなこともある。
自分の手で、この「満たされる」という想いを
作り出すことができる、そして人を満たすことのできる
エミさんのことをやっぱり尊敬せずにはいられなかった。
***
「今日もありがとうございました。ごちそうさまでした。」
そう言って、また来た時と同じようにマフラーをぐるぐる巻きにして
外へ出る。
ただ来た時と違うのは、縮こまって硬くなっていたコートの中の身体が
すっかり柔らかく、伸びやかになっていたことだった。
外は少し日が陰り始め、ぐっとまた一段と寒かったけれど、足の先までぽかぽかと温かい私は幸せだった。
エミさんが扉の外に出て、いつものように私が角を曲がるまで
手を振って見送ってくれていた。
この温かい場所、人、味、そして自分自身の身体を忘れずに、今日から始まる一ヶ月、また頑張ろう、と見えない新月に想った。
夕闇にどこかからかほんのりと蠟梅の香りが漂ってきた。
春はもうすぐそこだった。
-FIN-
Written by Saki Ikeda
明日から心を滋養するレシピをupします!
New moon Cafe Merta Sari もくじ
New!2月の新月
◯Story-ものがたり
◯Recipe-レシピ coming soon!
<2月のnew moon旬のお魚ランチ>
<2月のnew moonプレート>
Coming soon! 2/14 11:00up
- 春菊のクリーム白和え
<2月のごはん>
<2月のスープ>
<2月のパン>
●ミニトースト
<2月のNew moonワイン>
Gotsa Mtsvaneゴッツァ ムツヴァネ(オレンジ/辛口)
<2月のnew moon ハーブティー>
セントジョーンズワート