[New moon cafe Merta Sari] 第3話 8月 ものがたり その3

ちょうどいいタイミングで、オーダーした切り干し大根ととろろ昆布ナムルと、ゴーヤのさっぱり漬けが美しい器に乗って運ばれてきた。

家庭料理にありそうで、それでいて全然作ったことのない組み合わせ。

食欲のない時に口にしたいものは本当に限られてしまうけれど、やっぱりさっぱりとして、旬のものが一番美味しくいただける気がする。

 

緑の色の力強さが、まさに夏だ。

 

あれ?

よく見てみると、運んできてくれた彼女は、以前(参照:第一話 6月)桑の実のシロップを持ってお店にきていたあの彼女だった。

 

「今日は代わりに厨房に立っているんです。」と言ってぺこりとお辞儀をした。

 

エミさんはまた嬉しそうに笑う。

「モロッコの一流のタジン料理のお店に行った時も、南イタリアの田舎街のレストランに行った時も、地元のお母さんが厨房に急に入ってきてね『これはこうやって作るのが美味しいのよ!』って言ってガンガンお料理作ったりしていて、そんな様子を見てなんかとってもいいなあーって、思ったんです。そういうことって向こうでは普通みたいでね、ふふふ。そういう感じで、今日は焼き菓子malcoの祥子ちゃんという方に厨房に入ってもらっているのです。」

 

屈託なく言うエミさんことを面白いなーと思うとともに、世界には本当にいろんなことがあるのだなーと感心する。

エミさんのこの独特な軽やかさは、そんな色々を見聞きしてきたからなのかもしれない。

 

***

 

お箸にワイン、

一口食べた本日のデリは、さっぱりとしていながらも力強く美味しく、

夏の身体が喜んでいるのがわかる気がした。

「ナス、キュウリ、ズッキーニ、レタス、とうもろこし、シソ、、、etc 夏の野菜は薬理学的に身体を冷やす効果があるから、夏の調理法と、適したスパイスと合わせて使うと、物理的に冷たいものを飲んだり食べたりするより体がすっきりするの。本当にこんなに暑い夏でも夏バテ知らずになるんですよ」

とエミさんが言う。

 

こんな暑い夏なのに、夏バテしていない!?
すごいなあ!と心底感心する。

 

今年の夏は本当に暑く、どうしても台所に立つのも億劫になり、冷たいものだけを冷蔵庫から出して食べてしまうことも多く、それが夏バテの原因になっていることも頭ではわかってはいたのだけれど、

 

バテて気力がなくなってくると、どうしても食べるものもおざなりになってきてしまい悪循環だった。


ここでのご飯は、そんな自分の日常を軌道修正してくれる。

 

***

 

笑いながら誰かと食べるご飯は

こんなにも美味しく、そしてほんの少量でもこんなにも心が満たされるなんて

思いもしなかった。

 

話しても話しても、やっぱりエミさんは妖精のようで

それもまた日常で垣間見る人間のどろっとしたもの抜きの、不思議な感覚だった。

 

最後に、スープとパンをオーダーする。

 


「夏なのでね、そんなに量は要らないと思うんです、体のバランスから見ると。だけれど、多くの種類のもの、摂れるようにと思って。」

 

と、さいの目に切った沢山の野菜がモリモリ入ったスープがやってきた。

 

Written by Saki IKEDA

その4へつづく


New moon Cafe Merta Sari もくじ

8月の新月

◯Story-ものがたりNew!

《ものがたり》第3話 8月の新月 その1−1
《ものがたり》第3話 8月の新月 その1−2
《ものがたり》第3話 8月の新月 その1−3
《ものがたり》第3話 8月の新月 その1−4(最終話)

◯Recipe-レシピとオススメのお店

《Recipe》8月のnew moon旬のごはん ターメリックいかめし
Recipe》8月のNew moon デリ ゴーヤのさっぱり漬け
《Recipe》8月のNew moon デリ 絹豆腐とズッキーニのじっくり焼き
《Recipe》8月のNew moon デリ 鶏むね肉のバジル・バルサミコソース
《Recipe》8月のNew moon デリ 切り干し大根ととろろ昆布ナムル
《Recipe》8月のスープ たっぷり夏野菜のココナッツスープ
《Recipe》8月のデザート 甘酒と桃のグラニテ

《Recommend》8月のパン UFO(カンパーニュ) by おへそベーカリー
《Recommend》8月のnew moonワイン グリナルダ ヴィーニョヴェルデ
《Recommend》8月のnew moon オーガニックスパイスティー ケンボナシと夏のブレンド薬草茶 Merta Sari ブレンド(筒井農園)