「そうだったんですね。いや、今日いらっしゃらないから、何かあったかしら、でも春の始めだから、もしかして悪化したKapha(カファ)で苦しんでいるじゃないかしら、とも思って。それでふとお電話してみたんです。」
ああ、そうだった、エミさんはカフェの店長さんだけれど、
アーユルヴェーダのセラピストさんでもあるのだった、ということを
深く感じた。
そして、この電話をかけてきてくれたタイミングにもまさにセラピストだな、と思った。
こんな風に、季節から人の状態を読み解くことをやってのけるその不思議さもアーユルヴェーダなのだ。
そう納得していると、エミさんが更に続けた。
「そして貴女は、プラクリティの中にKaphaが多いでしょう?
だからどんなに気をつけて暮らしていても、春先ってちょっとバランスがグラグラしてしまうと思うのですよ。」
プラクリティ、というのはいわゆる体質のことだった。
アーユルヴェーダにおける体質は、先ほど述べたVata(ヴァータ)、Pitta(ピッタ)、Kapha(カファ)の3つのドーシャをどのように生まれ持っているかというものであり、そこからわかるその人の行動パターンや思考もあれば、病気の治療の処方を出すために最も重要なのも、その体質なのだった。
「自分のもともと持っているものが一番増えやすい、すなわち悪化しやすいのね。だから、Kapha(カファ)体質の方は、春先はだいたい皆辛いと思います。
そうそう、あと花粉症にも悩まされていたりね。」
私は更に驚いた。
「え!?花粉症もkapha(カファ)と関係があるのですか?」
エミさんは答える。
「そうなんですよ。その証拠に、鼻づまりなどの症状って温かいものをんだり、鼻腔や身体全体を温めたりすることで、治ったりするでしょう?
これはKapha(カファ)の持つ冷たいという性質と反対の温かいという性質を取り入れたから。アーユルヴェーダは同じものは同じものを増やし、反対のものは減らす、という原則があり、その症状を沈静化するには反対のものを取りいれることがポイントになるのです。
アーユルヴェーダでは花粉症はKapha(カファ)の悪化だと考えられています。そして日本の文化の中での冬の過ごし方そのものが、今はどうしても Kapha(カファ)を蓄積しやすいものになっているんですけれどね、、、」
とエミさんは言った。
「あ、この間おっしゃっていたお正月やクリスマスなどの行事での食べ過ぎのことですか?」
「そうですね。あと内容も炭水化物が多かったり、塩やお砂糖をしっかりと何にでも使う味付けだったり、とアーユルヴェーダの6味でいうとKapha(カファ)を増やす“甘味“と”塩味“にどうしても偏りがちなのが実は日本の食文化なんです。それに加えて現代のライフスタイルはどうしても運動不足になりがちでしょう。
花粉症はKapha(カファ)を冬の間に蓄積させやすい日本の現代病という解釈もあるのです。」
現代人の例にもれず、私もしっかりと花粉症だった。
そういえば、この鼻のつまりやかゆみのせいでも、気持ちがモヤモヤとしている気もする。
「エミさん、もちろん冬の間にKapha(カファ)を溜め込まないことが一番だと思うんですけれど、もう今年の春は手遅れで、、、。こんな時はどうしたらいいんでしょう?」
私は藁にもすがる思いで、そうエミさんに聞いてみた。
Written by Saki Ikeda
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